力秘める彫刻のような存在感

◇加藤松雄個展(30日まで、ギャラリー141 名古屋市西区名駅2、VIA141 1階)

 平板のようなハードエッジの長方形が何枚も重なり合い、空間的な奥行きを生み出した油絵約20点。鮮明な色彩に明暗の調子はなく、情緒的な雰囲気をことごとく退けている。
 1935年、名古屋市生まれ。L字、円弧などの記号形態で画面構成したシルクスクリーン(版画)作品を続けてきたが、90年代に入り、油彩にしかない直接的な力に眼を開いたようだ。一見、単調なデザイン模様とも見える画面だが、磁場に遭遇した板が張り付いたような塊の、彫刻のような存在感は、見る側に対し、はじき返すよな力をも秘めている。

筆者 井上昇治
中日新聞 1996年3月27日(水)夕刊